いつかやろうと思いつつずっと手を付けられていなかった器の金継ぎ。割れたり欠けたりしてもなかなか捨てられない器が溜まっていたのでついに初挑戦。
木の樹液である漆の強力な接着力を使って割れた器を接着し、金粉で装飾したら完成!文字にするとシンプルだけど完成までに工程が多く、乾燥にも時間が掛かるのが今までなかなか手を出せなかった理由の一つだ。
漆は小麦粉と混ぜると接着剤、小麦粉&木の粉と混ぜればパテ、土と混ぜればペーストと、混ぜる素材によってその機能を変幻自在に変化させられる優れもの。よく昔の人はこんな修復方法を思いついたなぁと感心してしまう。
まずは割れた断面をヤスリがけし、小麦粉と漆を混ぜた麦漆を塗ったらマスキングテープで仮接着。さてさてお次はと意気込んだものの、まずはこの状態で漆を乾燥させる為に一週間放置とのこと。漆が乾くのにはある程度の室温と湿度が必要なので、段ボールに濡れタオルを入れて「漆風呂」なるものを作って器を入れておく。
一週間後、漆が乾燥したら今度は器の欠けた部分をパテ状にした漆で埋めていく。ごく薄く塗っては漆風呂に入れ、乾燥したらまた漆を塗り重ねるという工程を何度も繰り返す。欠け埋めが終わったら今度は小さな穴埋め、その後に防水用に黒漆で上塗り、更にその上に赤い弁柄漆を重ね、と一つ工程を踏む度に数日間乾燥させ、少しずつ少しずつ完成に近づいていく。
埋めたり塗ったり表面をやすったりしながら長い時間をかけ、やっとの思いで金粉が蒔ける段階に!待ちに待ったこの瞬間。金継ぎのフィナーレ。弁柄漆を薄く塗った上から綿を使いながら優しく金粉を蒔いていく。金が乗るにつれ一気に器が煌びやかさを増していく。全ての面に金を蒔いたらついに完成!
金継ぎをして世界に一つだけとなった器は時間と手間暇をかけた分だけ愛着も湧き、なんなら割れる前よりも素敵にさえ見えてしまう。
金継ぎにハマってしまいそうな予感。人生初、割れた器が欲しいブームの到来だ。